酒井 郁子さん
( 千葉大学大学院看護研究科・看護学部 ケア施設看護システム管理学 教授、IPERCセンター長、看護師・保健師 )
大関夏子さん(記事:千葉ゆかりの医療者インタビュー3-大関-夏子さん)に引き続き、千葉大学看護学部卒業生(5期生)の千葉大学大学院看護研究科・看護学部 ケア施設看護システム管理学教授兼IPERCセンター長 酒井郁子さんにお話を伺いました。
■酒井先生の看護師としての臨床経験についてお聞かせください。
学部卒業後すぐに千葉県千葉リハビリテーションセンターに就職し、脳卒中後のリハビリテーションに携わりました。リハビリテーション医療は、単独の専門職種でできることは限られており、医師、看護師、薬剤師、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカーなど20余りの専門職種が協力しないと患者さんの生活の再構築は難しい。リハビリテーションは患者中心の職種横断的な仕事です。20歳代頃から、看護職だけが患者のことを考えているのではないと認識していました。
■現在、関わられている亥鼻IPE(Inter Professional Education)に関わられるきっかけをお聞かせください。
母校である千葉大学に戻り、現場の看護師が医師や薬剤師などの他の専門職との間で患者の目標の共有に困難を感じながら仕事している姿を見て、学部教育から専門職連携教育を導入していく必要性を改めて感じました。看護学部の歴代の学部長からの後押しもあり、また亥鼻キャンパスの学部を超えた協力のもとIPEを始動することができました。
■千葉大学でIPEを開始するにあたり障壁はありましたか?
千葉大学亥鼻キャンパスには、「患者さんのためならやろう、学生の学びになるならやろう」という共通認識があり、やらない選択肢はなかった。そういった意味で、専門職連携教育をするうえで大きな障壁はありませんでした。だれかが声を上げることだけが必要だったのだと思います。事実、3学部ともに一貫して協力的です。全国でもトップレベルの学生が集う千葉大学の亥鼻IPEは、学生側の感受性や柔軟性はとても高く、亥鼻IPEが成功している要因の一つと思います。
■理想の専門職連携についてお聞かせください。
“お友達”として仲良くなることは大切です。そしてその関係性を基礎教育という専門職として土台を作り成長し続ける4年間、6年間の期間で、共同学習をとおして、自職種と他職種の強みと限界を互いに理解し合い、患者利用者中心の医療ってなんだ?と考え続けることが亥鼻IPEで求めていることです。亥鼻IPEに参加している学生は若いですから、お互い譲らずグループの雰囲気が緊張した状態になることもあります。またメンバーのだれかが目的や目標を共有できずタスクの達成に向かえないこともあります。そこを自分たちで整理しながら理解を深めていくことが大事ですね。臨床に出たら、「多職種との協働」を助けてくれる人はいません。いろいろな専門職の人たちと出会ったその瞬間から、患者・サービス利用者を向いて、自分たちの知識とスキルを最大限活用し治療ケアを組み立てていける自律した医療組織人になってくれると嬉しいです。
■今後の目標をお聞かせください
長期的な目標は、IPEという言葉が亥鼻キャンパスの「当たり前」になり、ことさら連携協働といわなくても、教育と臨床が互いのリスペクトの上に成り立ち、共通の目標に向かうようになること。つまりIPEという言葉が無くなることですね。千葉大学のIPEは、他の医療系専門学校、他分野でも導入を検討されています。そういった意味で千葉大学はモデルケースとなっているので、これからも新しいプロジェクトを作っていけたらいいと思っています。
文責:櫻庭 唱子
参考資料:IPERCについて詳細は、コチラをご覧ください。
酒井 郁子(さかい いくこ)さん
千葉大学大学院看護研究科・看護学部 ケア施設看護システム管理学 教授、IPERCセンター長、看護師・保健師
1983年 千葉大学 看護学部 看護学科 卒業
1983年ー1987年 千葉県千葉リハビリテーションセンター
1987年ー1992年 千葉県立衛生短期大学 助手
1997年 東京大学 医学系研究科 保健学 卒業
1997年ー2000年 川崎市立看護短期大学 助教授
2010年ー 千葉大学看護学研究科 教授
20015年ー IPERCセンター長
研究テーマ:
- Interprofessional実践能力評価尺度の開発と検証
- 回復期リハビリテーション病棟における看護管理の理論化
- 急性期病院における認知症ケアの改善と評価
今回のインタビュアー
櫻庭 唱子さん(千葉大学看護学部看護学科4年)