【千葉ゆかりの医療者インタビュー1】鋪野 紀好さん

鋪野 紀好さん

(千葉大学大学院医学研究院 診断推論学/千葉大学医学部附属病院 総合診療科/新撰医チバ代表)


医師になった理由を教えてください。

 叔父が胃癌を患ったことがきっかけです。診断された時は既に治療適応のない状態でした。思い返せば,叔父はそれとなく体調変化を訴えており,「自分に知識があれば,違った結果になったのでは」と自責の念と己の無力さを感じました。その気持ちは「自分の身近な人を助けたい」に変わり,患者を「良く診る」ことができる医師になりたいという信念に昇華しました。

 

今の専門分野を選んだ理由は何ですか?

 私は総合診療を専門分野にしています。総合診療医のスキルは,医療資源が限られた地域の医療現場でも包括的に診療し,質の高い患者中心の医療を提供することにあります。

 千葉大学医学部の臨床実習で,生坂政臣教授(千葉大学総合診療科)が,問診だけで何年も診断不明とされている患者さんを診断するのを目の当たりにし,強い衝撃を受けました。

 

現在の職場での仕事内容はどのようなものでしょうか?

 千葉大学総合診療科の外来には,他医療機関で診断がつかない,多臓器にわたる症状を有するといった患者さんが受診されます。自身が診療に携わるのみならず,指導医として研修医や専攻医の診察をサポートし,正しい診断にたどり着いけるよう適切に舵取りをすることが今の私の仕事です。

 診断に応じて患者さんにとって最善の治療をスムーズに受けられるためのゲートキーパーを担うことも総合診療医にとって重要な仕事です。

 また,地域の住民の方々向けの公開講座を通じて健康増進活動を行っています。

 

今後の目標について教えてください。

 高齢者は複数の臓器疾患を合併していることが多いですが,総合診療医は心理社会面を含めた臓器横断的な問題解決ができるので,全人的な患者中心の医療を行うことができます。さらには,限られた医療資源でも,早期に診断を行うことで医療費の削減に貢献することが可能です。

 総合診療が普及するために,大学病院という基幹病院で優れた総合診療医を継続的に輩出し,医療水準を向上させ,国民の生活に貢献することが自分の使命だと思います。 


鋪野 紀好(しきの きよし)さん

千葉大学医学部附属病院 総合診療科/総合医療教育研修センター 特任助教

2008年千葉大学医学部卒業。14年に千葉大学大学院医学研究院博士課程修了。08年千葉市立青葉病院研修医,10年千葉大学医学部附属病院総合診療科シニアレジデント,11年千葉大学医学部附属病院総合診療科医員を経て,13年より現職。新撰医チバ代表。


今回のインタビュアー

大橋 浩一(おおはし こういち)さん

2011年千葉大学医学部卒。スカイツリーのふもとにある都立墨東病院で初期研修,循環器内科後期研修を経て,現在循環器内科医員として勤務。CCUでの患者受け入れ数,都内屈指の実績を誇る救急病院で循環器内科全般にわたる多忙な日常業務をこなし,学会発表や論文執筆の傍ら,後輩研修医への教育にも日々力を注いでいる。中国上海出身であり,院内では中国語圏からの患者の医療通訳を行う事で,科をまたいでの診療サポートも行なっている。